NOA ビルディング

銘板

【DATA】

  • 所在地:東京都港区麻布台
  • 設計:白井晟一+竹中工務店
  • 施工:竹中工務店
  • 竣工:1974年

 近代から現代にかけての建築の潮流とは一線を画した建築家、白井晟一氏設計によるオフィスビルです。割肌レンガの基壇とブロンズパネルの楕円形平面の塔、最小限に抑えられた形態と素材の組合せによるシンプルな外観は強烈なインパクトを持っていて、30年経った今でも、その力強さに圧倒させられます。近代以降の建築の多くは、良くも悪くも外観と用途が結びついているものですが、この外観からオフィスビルという用途を類推することは難しいのではないでしょうか?

外観
外壁の詳細

 全面を割肌レンガが覆う基壇をブロンズの塔よりも大きい楕円形平面とすることによって、塔は隣接するビルから一定の距離を保ち独立性を高めることができ、時間の経過に伴う隣地の状況にかかわらず、その存在感を際立たせています。
 楕円塔には縦長のスリットがランダムに穿たれており、これが塔の持つ垂直性をいっそう強めるとともに、その中間よりやや下側に横一線に開口部を設けることで、ブロンズの素材感から受けるマッシブな表情の中に、浮遊感を付与しています。また、基壇は開口部が最小限に抑えられ、装飾的な要素や開口部は一つとして同じ形が無く、割り肌レンガのテクスチャとともに多様な表情を見せます。にもかかわらず、散漫にならず素材と形態が持つ力強さを最大限に引き出しています。
 このような一見脈絡のない要素の間に、何らかのルールのようなものを見出すことはできません。しかしながら、その全体像からは、幹線道路から見通せる台地の頂部という敷地の特性を掴み取るために、徹底的にデザインされていることが感じられます。竣工当時、この建物を「現代建築の墓標」と評した評論家がいたようですが、場所の特性の読み取りに対する白井氏の造詣の深さが伝わってきます。