【DATA】
- 所在地:山口県下関市唐戸町
- 設計:ウィリアム・コーワン
- 施工:不詳
- 竣工:1906年
下関の唐戸地区で市民ギャラリーとして公開されている、英国領事館として建てられた建物です。
当時、領事館の候補地として下関と門司が挙がりましたが、その際、下関戦争後の講和条約締結で通訳を務め、高杉晋作と交流のあったアーネスト・サトウの英国政府への具申によって、1901年に下関に領事館が開かれました。その5年後、業務の拡大に伴い建てられたのがこのレンガ造りの建物です。設計者のウィリアム・コーワンは英国政府工務局上海事務所の技師長だった人物で、長崎の英国領事館の設計も手掛けています。
煉瓦造2階建の本館と煉瓦造平屋建の附属屋から構成されていて、本館1階は執務室、2階は領事の住居、附属屋は台所や給仕室となっています。これは当時の領事館としては典型的な平面計画で、間取りは建設当初の状態で残っていて当時の様子をうかがうことができます。室内はシンプルなデザインで華美なものではありませんが、それぞれの部屋に残っているは見所の一つです。附属屋は喫茶店となっていたのですが、残念ながら時間の都合で立寄ることはできませんでした。
外観は、構造体である煉瓦を基調に白い石の額縁やボーダーが配され、華美な装飾はなくシンプルなデザインです。階段状の立ち上がり壁を持つと通りに面した3連アーチのが特徴的で、屋根には日本瓦が葺かれていますが不思議と違和感はありません。建設当初は、この建物のすぐ目の前に関門海峡が広がっていたといいますから、このバルコニーからの眺めはすばらしかったことでしょう。
第二次大戦中に領事館は閉鎖され、戦後、この建物は派出所や博物館などを経て、中国自動車道建設に伴う市街地再開発によって取り壊しの対象になりましたが、熱心な市民による保存運動の結果、当初のまま存続されることになりました。平成11年には重要文化財に指定され、現在まで唐戸地区の重要なランドマークとして大切に使い続けられています。