Nakijinson , Okinawa , Japan
この公民館も象設計集団の初期の作品ですが、玄関やエントランスホールといった、「ここが入口です」という空間がありません。よくよく考えてみると名護市庁舎も同様で、建物には色々なところから入ることができて「ここが入口です」というスペースはありませんでした。また、このブログではまだ紹介していませんが、象の代表作である宮代町立笠原小学校や進修館も同様です。(この二つは近々紹介していきたいと思っています。)どうも、象設計集団の建築は、機能に縛られない空間の不明瞭さ、あいまいもことした空間のつながりが豊かさを生み出しているようです。
門から見る概観
中庭に面した列柱
この建物を訪れて低い門柱の間に立って建物を見渡すと、中庭をコの字型に囲む真っ赤な列柱と芝生の緑とのコントラストが強烈です。建物は南に開いた形で配置され、中庭の中心にシーサーを乗せた3本の独立柱が立っています。柱の上のシーサーは乙羽岳(おとはだけ)を背中に背負って建物に向ってますから、山の守り神といったところでしょうか。そして、その強烈な印象にもかかわらず入口らしいものは見当たりません。列柱が並ぶ廊下は吹きさらしの半屋外なので、どこからでも建物の中に入ることができるわけです。
中庭に建つ独立柱
このどこからでも入れる公民館は276本の柱で支えられる大きな屋根で覆われて、その大屋根の下に必要な部屋を分散配置、残ったスペースは吹きさらしの半屋外空間で屋内の面積とほぼ同じくらいあるそうです。この半屋外の空間に入ってみると、外部の強烈な日差しによる眩しさとは対照的に薄暗いものの、風通しがよく適度な涼しさで心地よい空間。普段の私たちの生活環境は、必要以上に明る過ぎるのかもしれません。
ステージのある半屋外空間
細部に目を移せば、貝殻で模様を描いた犬走、貝殻で書かれた今帰仁の集落の名称、天井にはガラスブロックが嵌め込まれた星座のレリーフ等、象らしい遊び心と手の跡が感じられるディテールに溢れています。
犬走りの貝殻の模様
門を入ってすぐ左手の舗装に書かれた字名
オリオン座のレリーフ
北斗七星のレリーフ
星座のレリーフもう一枚。星座に詳しくないのでご存知の方教えてください。
写真などでは、屋根に設けられたパーゴラにウッドローズやブーゲンビリアが鬱蒼と茂り、真っ赤な柱が緑の大屋根を支えている姿を見ていたのですが、訪れた時は台風の影響のためか植物はほんの少ししか生えてなく、コンクリートスラブがむき出しでした。次回はうっそうとした緑の屋根になってることを期待しています。
【DATA】
- 所 在 地:沖縄県今帰仁村
- 竣 工:1975年
- 構造/階数:鉄筋コンクリート造/地上1階建
- 設 計:象設計集団+アトリエ・モビル
- 施 工:仲里工業