“The Museum of Modern Art, Gunma” , Takasaki , Japan
「明治百年記念事業」として整備された群馬の森公園の付属施設としてつくられた美術館で、日本を代表する建築家 磯崎新氏の初期の代表作です。竣工後、数回にわたって、収蔵庫、展示室、シアターが増築され、平成17年〜20年には耐震補強や設備工事も含めた大規模な改修工事が実施されました。
外観
1階ピロティの螺旋階段
「美術館は美術作品を一時的に停泊させるための港のようなもの」という考えのもと「空洞としての美術館」をコンセプトとして掲げ、1辺12メートルの立方体の連結と配列という幾何学的な方法で構成されています。辺の長さや角度がすべて同じ立方体は「完全な」立体とも考えられますが、その完全さは上下左右という方向性を奪うものであり、逆に不安定な立体とも言えます。「空洞」を実現するために立方体を選択したことは、「完全さ」よりも「不安定さ」に着目しているように思います。
芝生広場に面した外壁
12メートルの立方体に対して1.2メートルのモジュール(設計の基準とする寸法)が採用され、外装パネルやサッシの割付は徹底的に揃えられていますが、立体に穿たれた開口部はモジュールから半分ずらされています。厚みのある部材でつくられる建築と純粋幾何学との間には常に「ズレ」が生じますが、この「ズレ」の処理に、設計者がコンセプト実現のために苦心した跡を見ることができます。
2層吹き抜けのエントランスホール
内部は2層吹き抜けのエントランスホールを中心に、各展示室、講堂、図書室等が配置された明快なプランニング。ここ数年のインテリアに多く見られるディテールレスなインテリアとは真逆のデザインで、一辺12メートルの立方体はフレームの露出として表されています。
エントランスホールを2階から見下ろす。
エントランスホールから2階へ上がる階段
【DATA】
- 所在地:群馬県高崎市綿貫町992-1群馬の森公園内
- 設計:磯崎新アトリエ+環境計画
- 施工:井上工業
- 竣工:1974年