【DATA】
- 所在地:山口県下関市南部町
- 設計:不詳
- 施工:関門商事(新富 直吉)
- 竣工:1915年
半球ドームを乗せた塔を持つ姿が印象的なこの建物は、下関を代表する海運会社、秋田商会の事務所兼住宅として建てられたものです。
外観は幾何学的に簡略化された装飾が施されていて、本格的な洋風建築というよりもどこかユーモラスなデザイン。当時は海岸線が間近に迫っていて、この塔は灯台の役目を果たしていたと聞きます。また、塔と並んでこの建物のもう一つの特徴が屋上庭園で、これは世界的に見てもかなり早い例とのことです。
内部に入ると、1階は洋風の事務所。柱や梁には外観と同様簡略化された装飾が施され、部屋の奥には造り付けの が、文字盤も当時のままに時を刻んでいます。
2、3階は、一転して書院造の本格的な 和風の設えが、洋風の建物の中にになっています。 2階は、かつて生活空間として使われていたもので、襖と間仕切りで幾つかに仕切られた書院造の住宅。 一方、3階は宴会などの際に大広間として使われていたようです。さらに、 で屋上に上がると、は市松模様にタイルが張られ、そこに花をあしらったタイルが散りばめらるという楽しげなデザイン。塔屋からに出ると、まで設えられた本格的な和風の庭園が広がり、洋館の屋上にいることを忘れてしまいそうになります。
これらの様々なユニークなアイデアは、秋田商会の創始者である 秋田寅之助による構想で、このことから、秋田寅之助の設計とする資料もあるようです。現在は、下関市の観光情報センターとして利用されていて、2階、3階、屋上の見学もできます。近代の建築が愛着を持って使い続けられている、幸せな例の一つです。
はじめまして、秋田商会の屋上庭園内の祠堂の写真が誤って表示されています。
祠堂は庭園奥右側角に設置されていましたが下関市に譲渡される際に撤去されました。表示されています写真は通常茶室と呼ばれていますが、実際は離れの和室と考えたほうが適切です。
以上、意見を述べさせていただきました。
亀松 靖弘様
はじめまして。コメントありがとうございます。
ご指摘の点、手元の資料を改めて確認しましたところ、写真の建物は祠堂ではなく茶室の誤りでしたので、本文の表記を修正いたしました。
ご指摘いただき、ありがとうございました。