【DATA】
- 所在地:東京都中央区銀座
- 設計:レンゾ・ピアノ・ビルディングワークショップ
- 施工:竹中工務店他
- 竣工:2001年
数寄屋橋交差点のソニービルのすぐ隣に建つ、 2001年にオープンしたエルメスの直営店です。店舗の他に、皮革工房、ギャラリー、ミュージアムを備え、メゾン(家)という名前が示すとおり、単なる店舗ではなく、エルメスという文化を発信する拠点として位置付けられているようです。
間口約12m、奥行き約47mという細長い角地に、ガラスブロックで覆われた二つのボリュームが道路に面して並べられ、隣地側には人造石の壁が置かれた非常にシンプルな構成です。450角という巨大なガラスブロックで全体を覆われた外観は、昼間には透明感のある上品な表情を見せていますが、夜になると華やかな光の塔へと表情が一変し、ネオンや看板で覆われた廻りの風景とは一線を画して強い存在感を示しながらも、まったく違和感なく銀座の街に馴染んでいるように見えます。
この外壁のガラスブロックには、技術的に手の込んだ様々な工夫が凝らされていますが、特筆すべき点としてガラスブロックの縁に施された鏡と同じ方法の塗装が挙げられます。この塗装が施されることによって、ガラスブロックという一つの材料でできた壁が、見る角度によって周囲のネオンが映り込んだり、光を拡散したり、逆に光を外部にストレートに通したりと、多彩な表情を見せる効果を生み出しています。
この建物を設計した建築家、レンゾ・ピアノ氏は、世界各地で数多くの大規模なプロジェクトに携わっており、日本では「関西国際空港」を手掛けているので、ご存知の方もいると思います。いずれの作品でも多様な技術的アプローチを試みていることから「ハイテクな」(この言葉自体が死後ですが)という形容をされた時期もありましたが、その技術的アプローチには、技術偏重主義ではない、デザインを実現するための必要性が感じられます。