【DATA 】
- 所在地:東京都千代田区丸の内
- 設計:前川國男建築設計事務所
- 施工:竹中工務店他3社JV
- 竣工:1974年
日本の近代を代表する建築家 前川國男の代表作、皇居のすぐ傍に建つ高層のオフィスビルです。 2つの矩形平面を組み合わせたセンターコア型の事務所空間を赤茶色の深い格子で包みこんだ外観は端正な表情を見せており、竣工から30年経った現在でも、その存在感は衰えていません。
外観を特徴付けている格子は、あらかじめタイルを割り付けた型枠を用いてコンクリートの部材を工場で製作し、それを現場で組立てる「タイル打込みプレキャストコンクリート工法」が用いられ、超高層ビルにタイルを採用する際の技術的な課題に対処しています。前川國男といえば、建築の技術的な側面を重視していたことで有名ですが、技術至上主義的なメカニカルなものではなく、建物の永続性を求めていく中で、デザインを実現する裏付としての技術の大切さを重視しており、その姿勢は他の作品でも貫かれています。
この建物は、高さ31mで統一されていた丸の内の中で、飛びぬけた高さで計画されたことに加えて、皇居の傍という敷地の特殊性から美観論争を巻き起こし、 1966年10月の建築確認申請提出から1974年の竣工まで、約8年という長い歳月を費やしました。結局、クライアントが30階建127mの計画を25階建100mに見直したことで、一応の解決を見たといいます。しかしながら、竣工から約30年の月日が経ち、先日オープンした新丸の内ビルディング等の超高層ビルが、当たり前のように姿を現した今となっては、当時の「美観論争」など忘れられてしまったかのようです。