【DATA】
- 所在地:札幌市中央区北三条東3
- 設計:新開新太郎
- 施工:新開新太郎
- 竣工:1907年
今でも開拓時代の建物・史跡が多く残る北三条通、サッポロファクトリーの通りを挟んだ反対側に、醤油醸造店として建てられたレンガ造の建物があり、現在は喫茶店として利用されています。
外部から見てもリニューアルした様子はほとんど分かりませんが、既存建物のアーチ状の開口部に入子状に組み込んだエントランス廻りは、ロゴの入った白い板張りの壁が印象的なシンプルでモダンなデザインとなっています。
このエントランス廻りはシンプルながら実に請っています。白い壁の下部に設けられた一枚ガラスの大きな開口部、その矩手に設けられた入口の扉、そして黒い板張りとのコントラスト、シンプルなデザインながらその構成は絶妙で、小さな空間に対する多様性の持たせ方は数奇屋の手法を思わせます。
店内に入ると、カウンター背後の壁は剥き出しになった躯体のレンガと漆喰塗りの組合せ。棚が組み込まれた窓枠は新設したものと思われますがまったく違和感は無く、レンガの質感とのコントラストが映えています。また、新設された板張りの壁と床は直線的なデザインに色彩も抑えたものとなっており、あくまでも既存の建物を主役にしようとする意図がうかがえます。
近年、戦前から戦後にかけて建てられた建築物が解体されるニュースが多く聞かれますが、古くからある建物を凍結的に保存するのではなく「現在」として活かしている好例となっています。