同潤会 江戸川アパートメント

江戸川アパート 銘板

【DATA】

  • 所在地:東京都新宿区新小川町
  • 設計:同潤会建築部営繕課
  • 施工:銭高組
  • 竣工:1934年

同潤会が設計した最後の集合住宅は、JR飯田橋駅の北側、首都高5号線の高架のそばにありました。総住戸数260戸という大規模のもので、竣工当時、多彩な共用施設やエレベーター、電話、スチームなどの近代的な設備が備えられ、非常にモダンな雰囲気を持っていたことから、「東洋一のアパートメント」と称されたと言います。

2号棟外観
江戸川アパート1号棟外観
江戸川アパート食堂 入口

敷地北側に建つコの字型の1号館、南側に敷地に沿って一直線に建つ2号館の2棟構成。2棟が緑豊かな中庭を囲むように配置されていて、中庭は同潤会アパートの中でも最大規模のもので、遊歩道や噴水、児童公園などが設けられています。 解体直前の2003年4月初旬に訪れたのですが、桜が立派に花を咲かせていて、東京の真っ只中にいるのを忘れさせてくれるような環境でした。
全体的にはインターナショナルスタイルに影響を受けたと思われる直線を基調とした簡素なデザインですが、そこに展開するデザインのエッセンスは実に多彩で(123)、シンプルながらも単調にならず中庭の木々と不思議に調和しています。また、細部はアールデコのようなグラフィカルなデザインも見られ、食堂のステンドグラスに見られる幾何学的なパターンも美しいものでした。
住戸タイプを見ると実に多彩で、大きく分けて家族向、単身者向があり、それぞれに和式と洋式が用意されています。その中でも家族向住戸については、細かく分けると40種類以上ものタイプが用意されていたといいます。
また、共用施設も充実していて、共同浴場、理髪店、食堂、社交室、娯楽室などを備え、社交室では住民の識者による講演会や様々な教室が頻繁に開かれ、コミュニティの形成に一役かっていたようです。
このような多彩な住戸プランや充実した共用施設は、ここ数年のブームの中で建てられたマンションにも多く見られますが、 70年以上前に計画されたこの江戸川アパートメントで既に試みられていたということに驚かされます。
このアパートメントも、既にご紹介した 青山アパートメント、 大塚女子アパートメント と同様に、残念ながら2003年に取り壊されました。ただ、他の同潤会アパートと若干事情が違い、共用施設の一部を保存しながら「新江戸川アパート」として計画が進められているということです。