【DATA】
- 所在地:東京都中央区銀座4丁目
- 設計:白井晟一
- 施工:大成建設
- 竣工:1963年
いつかは来るだろうと思っていましたが、ついにこの日がやってきてしまいました。戦後の建築家の中で多作ではないながらも強烈な個性を発揮した建築家の一人、白井晟一の作品の解体です。 はじめてこの建築を見たときは既に銀行としては機能してなく、しばらくして大手百貨店のオフィスとして利用されていることを知りました。しかし、銀座4丁目の交差点のすぐ近くという恵まれている立地にもかかわらず、1階は閉鎖されたままだったため、暫定的に利用されているのだろうと思っていたところ、案の定、先日ひさしぶりに見に行ったところ解体のお知らせ看板が出ておりました。 この銀行は、白井晟一による親和銀行シリーズの最初の作品。最大の特徴はその開口部の少なさで、これは白井晟一の他の作品にも共通して見られる特徴。銀座という日本一の繁華街、晴海通りに面しているにもかかわらず、華やかさよりもストイックさを感じさせるその姿は、建築物というよりも彫刻といった方がふさわしい様相です。
石の塊のごとき重厚な基壇部、その上に乗せられたタイル張りの量塊、大きく二つの要素で構成されます。基壇部は開口部の彫りを深く取っているため石の塊が鎮座しているかのように見え、また大きく深く刳り貫かれた晴海通り側の表情は人工的な洞窟のようです。その基壇の上に、小さな丸い開口を繰り返した中間層を挟んで、タイル張りの塊が乗せられています。タイルは底まで切れ目無く張りまわされ、極限まで制限されたスリット状の開口部と相俟って、基壇部ともどもマッシブな表現は強調されます。 一方、小さな丸い開口が繰り返される中間層は、そのグラフィカルな表現によって物質感は排除されて上下の塊を切り離し、上の塊に宙に浮いているようなアンバランスな危うさを与え、建物全体としてはどっしりとした物質感とアンバランスさという相反する不思議な要素を共存させています。 この円形を繰り返す表現は扉のデザインにも用いられているほか、白井晟一の他の作品でも繰り返し用いられます。この表現は古くは古代ローマの建築にまでさかのぼるものですが、建築に限らず様々分野のデザイナーによって、今でも繰り返し用いられているのは興味深いところです。 この建物は、あまり多くの人々に意識されることはなかったかもしれませんが、華やかさばかりが強調されがちな銀座に緊張感を与え続けてきたように思います。40年という短い時間で人知れず姿を消してしまうことが残念でなりません。
実際に見たことは無いのですが、非常に残念です。代わりに左隣のビルを解体してほしいぐらいですね。
私、大阪なんですが、大阪でも黒川紀章のソニータワー、安藤忠雄のOXY鰻谷が解体です。
なにわ人さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
心斎橋のソニータワーとOXY鰻谷解体ですか?
どちらも流用できるつくりではないとは言え、
竣工してそんなに時間が経ってないですし、
何か一工夫して再利用できないものですかねえ。
なんとももったいない気がします。
三信ビルのWEbからここへ来ました。私は、US在住15年になりますが、日本にはこんなにたくさんの素晴らしい建築物が隠れていたんですね。上野,銀座、神田、etc.は大学時代のテリトリーだったのに。このビル周辺も、三信ビルも良く通っていたはずなのに、もっと良く見ておけば良かったなあと思います。日本は「解体」なんですよね。アメリカは少なくとも外観を残しますよね。とても残念です。そういえば昔友人が本郷の3階建ての木造アパートに住んでいましたが、まだあるのかしらなんて思っているのですが。
qazさんのお写真の数々、久しぶりに心がなごみました。ありがとございました。
やっぱり壊さなくちゃいけないのかな。
また景色が少し変わっちゃうんだ。
銀座松坂屋が高層ビルになったら、東京の事、本当に嫌いになりそうです^^;
qazさんのページは勉強になります。ありがとうございます。
さくらさん、lovetolaboさん、こんばんは。
昨日、行ってみたら工事用の仮囲いがかかってました。
この建物が銀座にあったことを意識されてる方が、
どの位いらっしゃるのか分かかりませんが、
ひっそりと壊され突然真新しい建物が建って、
それもあっという間に銀座の町の一部になっていくのだろうと思います。
とうとう建築も消費材になってしまったのかもしれません。
でも銀座に超高層は似合いませんよね。
>さくらさん
本郷の木造3階建てのアパートは、
先月近くを通ったらまだありました。
近く本郷に行く用事があるので見てみますね。
小さな頃から見慣れた建物でした。
銀座4丁目のバス停でバスを待っていればイヤでも記憶に刷り込まれるというモノ。
聞いた事のない名前の銀行ではありましたが、堅固な造りで銀行にはピッタリだと思っていました。
ニューヨーク等の金融街にある古い銀行に通じる所がありました。
同じ晴海通り沿いには同じく地銀の七十七銀行もありますが、重みは全くありません。
あのビルが取り壊されてしまってとても残念です。
突然スミマセン
旧親和銀行東京支店の跡地に三越が鹿島建設の設計で建つようですけど、白井晟一氏のこの建物の神が細部に宿ったエレメントはどこに行ったのでしょう。
壁面の半円状の凹み部に彫られた書をはじめ照明器具やドアノブなど白井好みのデザインが各所に施されていた筈。気になります。鹿島さんあたりどこかにちゃんと保存していますかね。タイルの破片1枚でもほしいのです。
>佐藤賢一様
銀座三越の増床は大きなニュースになってましたね。ちなみに、このビルは、解体前には三越のオフィスとして使われていました。
この建物に使われていた照明や金物等が保存されているのかどうかは、残念ながら分かりません。この建物の解体は、一般誌はもちろん専門誌でも、まったくと言っていいほど取り上げられず、人知れず無くなってしまいましたから、保存されている可能性は低いのではないでしょうか?
しかし、何度見ても、この建築はストイックで研ぎ澄まされたすばらしいデザインだと思います。今となっては見ることができないのが本当に残念です。
平成11年から14年までここで働いてました。
偶然見つけました
森さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
このビルで働いていらっしゃったんですね。一度内部を見てみたいと思いながらも叶わなかったので、うらやましい限りです。
デザイン等でお気づきになった特徴等があれば、教えていただけるとありがたいです。
ちなみに、現在、群馬県立近代美術館にて「建築家 白井晟一 精神と空間」という企画展が開催されています。概要は以下の通りです。
【開催概要】
■会 期:9月11日(土)〜11月3日(水・祝)
■開場時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
■休 館 日:月曜日
■会 場:群馬県立近代美術館 展示室 1
■観 覧 料:一般:800円、大高生:400円
団体割引料金
・中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料
・10/28(木) 群馬県民の日は無料
■群馬県率近代美術館「建築家 白井晟一 精神と空間」(http://www.mmag.gsn.ed.jp/e…)
懐かしい写真をありがとうございました。
私はすぐ近隣の歯科医院に1985年から10数年勤務しており、親和銀行さんからはたくさん患者さんがきておりました。
私もビル内には何度もおじゃました事があり、半地下のロビーは銀行らしかぬ造りで、ここは本当に特別な建物のなのだなと思わされました。
ご存知のように今ではこの建物を含め周囲は再開発で三越伊勢丹ホールディングスの本拠地となり、まったく新しい街になってしまいました。
良いものを永く使うという文化が日本に根付かないのは残念でなりません。
吉田さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
お知らせ看板でこの建物の解体を知り、
急遽、次の週の週末に写真を撮りに行きました。
4年以上も前になりますが、ついこの間のことのようです。
この10年で銀座の風景はかなり変わりましたね。
良いものを長く使う文化、根付きませんね。
日本では特にそうかもしれませんが、
全体的にモノゴトのスピードが速まっているように感じます。