大阪倶楽部

大阪倶楽部 外観

【DATA】

  • 所在地:大阪市中央区今橋
  • 設計:安井 武雄
  • 施工:大林組
  • 竣工:1924年

 大阪倶楽部は、古い格式を持つ大阪財界人の社交クラブで、安井武雄が片岡建築設計事務所の所員時代に手掛けた作品です。 安井氏本人は「南欧風ノ様式ニ東洋風ノ手法ヲ加味セルモノ」とこの建物のデザインを称しています。単窓とアーチをバランスよく配し、頂部や窓廻りをテラコッタで飾ったタイル張りの全体像が南欧風。各部に見られるエキゾチックな装飾が東欧風というところでしょうか。しかし、今橋通りに面して建つ姿からは、何々風という形容を超えた安井 武雄の造形力を実感させられます。

大阪倶楽部 正面アーチと独立柱
大阪倶楽部 側面窓廻りのディテール
大阪倶楽部 独立柱頂部のディテール

 正面の荒々しい石張りのアーチは、植物をモチーフとしたような密度の濃い装飾で縁取られるとともに、アーチ内のタイルは格子状に張られ、外壁とは仕上げのパターンに変化がつけられています。また、建物の前面、アーチの間に並べられた独立柱は西洋の様式とは明らかに異なる形状となっており、その頂部には何とも不思議な彫刻が施されています。他にも、窓廻りや建物頂部に施されたテラコッタの装飾、階段室の2階部分に張り出した密度の濃い窓廻り、正面中央の入口上部の窓枠下部に嵌められたメダル(このメダルは焼物でしょうか)等々、外観だけでも見所は付きません。
 安井 武雄の代表的な作品は、この大阪倶楽部の他、御堂筋に面して建つ大阪ガスビル、東京 日本橋の傍に建つ野村證券ビル等、いずれも地域のランドマークとして欠かせない建築となっていますが、いずれの作品も何らかの一つの様式に捕らわれることなく、同じ建築家によるものとは思えないほど実に多様なデザインとなっています。「徹頭徹尾、様式というものに反抗した。・・・(中略)・・・私はそれを決して悔いない。将来においても悔いることはないと思う。」という、安井氏の自信に満ちた言葉にも伺われるとおり、何にも捕らわれない自身の建築に対する自信、そして自身が生み出した建築さえも越えようとする姿勢が、「安井式」とでも呼ぶのにふさわしい多様な作品を生み出したと言えるでしょう。