大阪証券取引所

建替え工事中

【DATA】

  • 所在地:大阪市中央区北浜
  • 設計:長谷部竹腰建築事務所
  • 施工:大林組
  • 竣工:1935年

 200年以上の歴史を誇る大阪の金融街 北浜、堺筋と土佐堀通りの交差点に建っていた証券取引所。楕円形のエントランス部分が地区のランドマークとして親しまれていました。設計は、住友銀行本店建設のために置かれていた建築家集団 住友工作部の中心人物だった長谷部鋭吉と竹腰健三によるもので、長谷部は意匠の名手として他にも多くの建築を残しています。

大阪証券取引所 かつての外観
<%image(20050218-underconstraction.jpg|360|270| 大阪証券取引所 建替え中の様子)%>
この写真はPALLAさんからご提供いただきました。

 花崗岩張りの外観は無装飾でシシンプルなデザインであるのにもかかわらず、コーナー部分の列柱が並ぶ楕円筒は北浜のランドマークとしてこれ以上無い力強さを持っていたと思います。また、装飾的な要素が施されない分、規則的に配置された窓のリズム、各部のプロポーションと全体のバランスがその美しさを決定付けますが、住友銀行本店と同様に長谷部鋭吉の手腕が発揮されています。そのようなシンプルな外観とは対照的に、立会所や会議室等は手の込んだ装飾が施されたすばらしい空間であったと聞きますが、残念ながら見ることができませんでした。
 このように外に対して虚勢を張らず内部に趣向を凝らすというデザインは、そごう百貨店や大阪ビルヂング旧館等、近代大阪を代表する建築に見られる手法です。これは現代大阪のいわゆる「コテコテ」なイメージとは対照的ですが、大阪の文化が本来持っていた特色です。何でもありと言わんばかりに派手なデザインが飛び交う現代だからこそ、今となっては忘れられたこの特色を見習う必要があるようにも思えます。
 この証券取引所も近年の開発ラッシュの波に呑まれてしまい、コーナー部分を保存した建替えが行われ、2004年11月にガラス張りの高層建築になってしまいました。低層部は元の建物を真似たデザインになってていますが、かつての存在感を知る者としてはいかにもハリボテ的で痛ましい感じすらします。