読売会館(旧有楽町そごう)

外観夜景

【DATA】

  • 所在地:東京都千代田区丸の内
  • 設計:村野・森建築事務所
  • 施工:1957年
  • 竣工:清水建設

 JR有楽町駅前という恵まれた立地条件でありながらも、三方を道路に囲まれた三角形の狭小で不整形な敷地は、百貨店としては決して恵まれた敷地ではありませんでした。しかしながら、関西の百貨店が戦後復興が進む東京に相次いで進出していた当時、「有楽町そごう」はその最後発として東京進出を果たし、有楽町のランドマーク的存在として親しまれてきました。その後、2000年9月にそごうの会社更生法申請に伴い43年間の歴史に幕を閉じ、翌年2001年6月には家電量販店が新しいテナントとなり現在に至っています。

ホワイエ
ホワイエの階段
外壁のディテール

 建設当初は隣接する旧東京都庁(設計:丹下健三)と比較され、「公共」対「商業」という対比の構図でもって取り沙汰されることが多かったようです。構造と機能との結びつきがそのままデザインとなっているとされる旧都庁に対して、「有楽町そごう」は外部の表現と内部の構造との乖離が非難の対象となり、建築家がここで示した都市と建築の関わり方については、ほとんど取り上げられることが無かったようです。
 その問題提起は、その非難の対象となった外装の表現に顕著に現れています。西側のファサードは、家電量販店となった現在はLEDが嵌め込まれた金属パネルに覆われていますが、竣工当初は白いテッセラ(大理石などの四角い小片によるモザイクタイル)が一面を覆う壮麗なものでした。これは単なる商業施設を覆うパッケージとしての豪華さではなく、テッセラの豊かな表情によって通りに華やかさを演出しながら、開口部の少ない壁面によって丸の内のオフィス街の喧騒に対して対峙することを意図したのではないかと思います。しかし、この建物に訪れたときは既にアルミパネルに改装されていたため、残念ながらテッセラが張られたファサードを見たことはありません。
 一方、JRの高架に面して曲線を描く東側ファサードは全面ガラスブロックが貼られた水平線が強調されたデザインで、多くの人が利用する山手線からの動的な視点をに対してアピールすることを意図したものと思われます。(これまで建設当初のオリジナルだと思っていましたが実は全面的に改修されていて、これは改修設計の担当者が当初のイメージを重視したものだそうです。)現在は家電量販店の広告が占めているものの、この夜景をみるかぎり当初の意図は未だ健在です。北側に隣接する東京国際フォーラムが、西側の丸の内と東側の鉄道、双方に対して無愛想な壁を対峙させて、周辺との関係を絶っていることとは対照的です。
 内部は家電量販店へのテナントの変更に伴い全面的に改修されていますが、7階の「よみうりホール」の内部空間は健在で、日生劇場に通ずるうねるような空間が残されています。しかし、実施されている公演に魅力的なものが少なく、このホールの空間は未だに体験できずじまいです。